第 4 回 歯車

本日の内容


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4-1. 課題の概要

歯車の基本を学び、可動部分のある製作物について学ぶ。

4-2. 課題の進め方

想定実施期間1ヶ月

可動部のある造形物を製作すること。

以下の手順を一回以上行い(つまり製作物は班で1つ以上)、最終的に 自由製作物を作製し、特に設計の検討を詳しくまとめたプレゼンテーション とレポートを作製する。

  1. 作製物のコンセプトを練る(要議事録)
  2. 様々な面から検討を行う(要議事録)
  3. 3D CAD などで STL ファイルを作製する
  4. プリンターでモデルを作製する
  5. コンセプトや検討を重視したプレゼンテーションのスライドを作成し、発 表会を実施する
  6. 発表会の質疑を受け、最終レポートを作成する

4-3. 参考資料:時計の製作

分針と時針のある時計の作成を考える。 分針が360°回る毎に時針は30°同じ向きに回る。 したがって、減速比は360:30=12:1となる。

歯車はかみ合うと逆向きに回転する。 したがって、同じ向きに回転する減速比12:1の系を作るには、二回歯車を かみ合わせる必要がある。 そのため、減速比 4:1 と 3:1 を組み合わせた系を仮定する。

歯車の基礎

台形歯

歯車には様々な種類があるが、この実験では平行軸の平歯車を設計する。 歯の形は台形ではなく、 インボリュート曲線となる。 また、歯元の形状も台形ではない。 但し、これはCADが自動生成するので、深くは触れない。

二つの歯車がかみ合う場合、歯の外側でも内側でもなく、相互の歯の接触 している点が描く円が重要となる。この円をピッチ円と呼ぶ。 ピッチ円の直径(Pitch Diameter)を歯数(Number of Teeth)で割った数 を モジュールと呼ぶ(実際の歯の大きさを円周率で割った値 になる)。 歯の大きさを表すのに、実際の大きさで表さず、このモジュールで表すのが一 般的である。 噛み合う歯車は同じ大きさのモジュール同士である必要がある。

歯車の減速比はピッチ円の直径の比になる。

さらに必要なパラメータとして、中心軸の径、歯車の厚さの他に、歯の底 とピッチ円の周との距離である 歯面と歯底との間の曲率の半径である 歯底隅肉部曲率半径(Root Fillet Radius)を定める。 なお、歯底隅肉部曲率半径は歯車の強度に関係するようである。 歯と基礎円との境界に角があるとそこから亀裂が入りやすくなるようであ る。そのため、中心軸径との兼ね合いで肉厚に問題が出ない限り、最大値 で設定した方が良いようである。

時計の歯車の設計

時計は分針と時針が同軸であり、さらに、同じ向きに回るようにするため、 中間に歯車がある2段階の減速をする必要がある。 一段目の歯車を G1 , G2 とし、その歯数を T1 , T2 とする。 二段目の歯車を G3 , G4 とし、その歯数を T3 , T4 とする。 G1 と分針が接続し、 G2 G3 が接続し、 G4 と時針が接続しているとする。 すると、 T1 / T2 T3 / T4 = 30 / 360 となれば時計の針の動きを表すことがで きる。 ここで、 T1 / T2 = 1 / 4 , T3 / T4 = 1 / 3 と置く。

時計の歯車

さらに、分針と時針を同じ軸で動作させるため、 G1 G4 を同じ軸で回るよ うにする。 ここで、 G1 , G4 G2 , G3 の距離を 1 と置く。 すると、 G1 G2 G3 G4 のピッチ円の半径はそれぞれ、 1 1+4 , 4 1+4 , 1 1+3 , 3 1+3 となる。 モジュールの定義は、歯車のピッチ円直径を歯数で割ったものである。 すべての歯車のモジュールが k だとすると、次の式が得られる。

2·1 1+4 T1 = 2·4 1+4 T2 = 2·1 1+3 T3 = 2·3 1+3 T4 = k

これより、以下が得られる

T1 = 2 5 k T2 = 8 5 k T3 = 1 2 k T4 = 3 2 k
T1 T2 T3 T4 = 4 16 5 15

したがって、例えば、一番小さい歯車の歯数を T1 = 16 と定めると、各歯数は T1 = 16 T2 = 64 T3 = 20 T4 = 60 と求まる。

Fusion 360 における歯車の設計マニュアル


坂本直志 <sakamoto@c.dendai.ac.jp>
東京電機大学工学部情報通信工学科