第 13 回 まとめ

本日の内容


このドキュメントは http://edu.net.c.dendai.ac.jp/ 上で公開されています。

13-1. レポート課題

MACアドレス

手持ちのスマホ、パソコンなどの MAC アドレスを調べて報告しなさい。

未来の情報通信社会

6人までのグループを作り、自由にディスカッションして、5年後の情報通信社会を想像して、簡潔なレポートとしてまとめなさい。 但し、大雑把でも根拠があることとし、荒唐無稽なものは認められない。 (指先を発光させられるようになり、高速な通信ができるようになるなどは駄目)

締切、提出方法

来週火曜日の夕方までに <[email protected]>宛に グループで一通のレポートを作成し、 メールすること。

13-2. レイヤ2 ネットワーク機器

情報を伝達するには、様々な技術の組み合わせが必要です。

情報→符号化→暗号化→誤り訂正符号→搬送波による変調 →多重化→波による伝搬

→多重化技術に基づいた波の受信→復調→誤り訂正→暗号解読→復号→情報

ディジタル通信では

  1. 0を表す信号と1を表す信号が波として表現され、
  2. それが空中、電線、光ファイバなどを伝搬して、相手側に送られます。

これを実現するために、以下を学びました。

このような様々な通信技術を用いて、現在の通信は実現されています。

13-3. 通信機器

ハワイ大学のALOHAネットワークから派生した、DEC, INTEL, XEROX の Ethernet の規格化をするため、IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers、米国電気・電子技術者学会)で1980年に 802 委員会が作られました。 そして、ローカルエリア・ネットワーク、メトロポリタンネットワーク など様々なコンピュータネットワークの規格化を行っています。

IEEE 802.1X
802.1 ワーキンググループでは具体的なネットワークを規定するのではな く、ネットワークの制御機構について規格化します。 802.1X 規格はネットワーク認証に関する規格で、本学の無線LAN接続にも使用 されています。 認証と接続が一括して行えますので、便利です。
IEEE 802.3

Ethernet と呼ばれる有線ネットワークの規格です。

無印の 802.3 は 10MHz のベースバンドを使用するものでした。 64Byte から 1500Byte のパケット長で、MAC アドレスは48bitでした。

その後、100MHz を経て、現在パソコンについているのは殆どが 1000Base-T(IEEE 802.3ab) と呼ばれる 1GHz のベースバンドを持つ形式です。 これは、 RJ-45型のコネクタの付いた、8芯のCategory 5e 撚り対線ケーブルを用いたもので、 全二重でスイッチングハブを用いて効率的に通信ができます。

現在それよりも高速なものとして、 学内で使用されている 10GBase-T(802.3an)という Category 6a ケーブルを使 うものがあります。 Category 5e を使う最も速い規格は 2.5GBase-T, 撚り対線を使う規格 で最も速いのは Category 8 ケーブルを使う 40GBase-T, 現在規格化されている最も速いのは 400GBase の光ファイバや短距離の 特殊なケーブルを使うものです。

IEEE 802.11

Wi-Fi とも呼ばれる規格です。 厳密には 802.11 準拠の装置同士の相互接続が認められたことを示す名前が Wi-Fi です。 現在使用されている主な規格は、802.11n (2.4GHz と 5GHz 混用, 600Gbps 以下)か、 次世代の 802.11ac(5GHz, 6.93Gbps 以下)、 です。 これより古い 802.11a(5GHz, 54Mbps) や 802.11g(2.4GHz, 54Mbps)が使 われていることもあります。

2020年から802.11ax(Wi-Fi6)が導入されます。 さらに、50GHz 帯を使用する 802.11ad, プラチナバンドである VHF, UHF 帯を使う 802.11af, 900MHz 帯を使う 802.11ah, 車両間通信用の 802.11p などの開発が行 われています。

IEEE 802.15
Wireless Personal Area Network(WPAN) とも呼ばれている近距離通信規 格です。 802.15.1 が Bluetooth という名前で普及しています。 また、 8021.15.4 は ZigBee という名前で呼ばれている近距離省電力用 のセンサーネットワーク用の通信として規格化されています。 この他 Ultra Wide Band (超広帯域、小パワー)も802.15.4a として規格化されてい ます。
IEEE 802.16
Wireless Metropolitan Area Network(WMAN)と呼ばれている規格です。 当初は基地局と家などを結ぶための規格として登場し、WiMax などと呼ばれる 規格が決められていましたが、近年は携帯電話回線のLTEと合流する流れ になっています。

なお、有線LANはスイッチングで接続するため、一つのポートには通信限界までパケットが流せますが、 無線LANは一つの基地局が同時に通信できるのが一つの端末局のみな ので、 端末台数で通信速度が分割されます。

13-4. レイヤ2とレイヤ3の架け橋 Address Resolution Protocol

インターネットは次の2つの技術が中核です。

  1. 有限長の長さの宛先付きのデータのネットワーク間の中継(Internet Protocol IP レイヤ3)
  2. それを利用したファイル転送(Transmission Control Protocol TCP レ イヤ4)

さて、 波を利用した情報伝搬(レイヤ2)を用いてインターネットを構成する場合、 そのレイヤ2の様々な通信形態が存在しますが、それらをどのように利用すれ ば 良いのでしょうか? レイヤ2の通信装置には それぞれを個々に認識するためにその通信形態固有の装置アドレス を持っています (物理アドレスMACアドレス(Media Access Control))。 これは IP アドレスではありません。 一方、 インターネット通信をする場合、IPアドレスを指定して通信することを学び ましたが、 これと MACアドレスは直接関係ありません。 レイヤ2において個別の通信装置間で情報をやり取りするには MACアドレスで やりとりする必要があります。

そのため、レイヤ2の各通信方式ごとに、IPアドレスとMACアドレスの変換を行う必要 があります。 これを自動的に行うのが Address Resolution Protocol(ARP) です。 ARP はインターネット通信をする際に、IPアドレスとMACアドレスの表(ARP テーブル)を作り、その表を利用して宛先アドレスのMACアドレスを求めます。

ARP

送信ノードがIPパケットを送ろうとする。 IPパケットには宛先IPアドレスと送信元IPアドレスが記載されてい る。

各ノードは常にネットワークを監視し、ブロードキャストを受信する。

  1. 送信ノードは次の情報を持つARPパケットを作って送る
    1. ARPコマンド:リクエスト
    2. 宛先MACアドレス:ブロードキャスト(全ノード宛)
    3. 宛先IPアドレス:IPパケットより転記
    4. 送信元MACアドレス:自ノードのMACアドレス
    5. 送信元IPアドレス:IPパケットより転記
  2. 各ノードはブロードキャストを受け取り、自分のARPテーブルに載っている IP アドレスであったらARPテーブルを更新する。 もし、自分のIPアドレスと一致していたらARPテーブルに追加または更新を行っ た後、 次の情報を持つARPパケットを作って送る
    1. ARPコマンド:リプライ
    2. 宛先MACアドレス:ブロードキャストを送ってきたノードのMACアドレス
    3. 宛先IPアドレス:ブロードキャストパケットより転記
    4. 送信元MACアドレス:自ノードのMACアドレス
    5. 送信元IPアドレス:自ノードのIPアドレス
  3. ARPコマンド:リプライのパケットを受け取ったら、ブロードキャストと 同様にARPテーブルを更新する(リプライは送らない)

なお、パソコンではARPテーブルは arp コマンドなどで表示や操作ができま す。(arp -aなど)

このようなプロトコルを通信方式ごとに作成することで、どのような新技術 でもインターネットに対応することができます。

13-5. まとめ

  1. 通信における基本的な概念である、符号化、搬送波、帯域、通信手順(プ ロトコル)、暗号、多重化などを学びました。
  2. インターネットの重要技術 TCP/IP を学びました

ネットワークに関する様々なことを考えるには、ネットワークの仕組みや構造 を知る必要があります。

  1. 小学生にネットワークの仕組みを説明できますか?
  2. 手元のスマホが使用できなくなった時、原因をいくつ思いつきますか?

13-6. 未来展望

  1. 通信容量的に、東京オリンピックの観客全員が別々にYouTubeを観るこ とは可能なのでしょうか?
  2. IoT(Internet of Things)が現在注目されています。これは、様々なも のがインターネット通信を可能にすることを指します。 冷蔵庫、エアコンばかりではなく、衣類や食品なども含まれるようになる かも知れません。
  3. アニメーションで「攻殻機動隊」や「ソードアートオンライン」では、フ ルダイブ環境(視覚などの感覚などがすべてコンピュータに直結して、イ ンタラクションを行う)が登場していますが、これはまだ非現実的なことと してよいのでしょうか?
  4. ワープロが進化して学習や生活が一変したように、 AI が進化して様々な機械的な判断(運転など)をコンピュータに任せら れるようになるかも知れません。
  5. 私は20年位前に携帯電話にカメラが付いたときにすぐに意味がわからずに 困惑しました。 しかし、当時、建築現場とか工事に便利とか聞いて、「特殊な用途には便利なん だな」と思うようになりました。 今後、スマホにはどのような機能が追加されるのでしょうか?
  6. コンビニは、もともとはそこそこ品揃えの良い余り値引きをしない小売店 というコンセプトでした。それを実現するために、在庫のコンピュータ ネットワーク管理と、仕入れを週1度から一日数度に上げるような工夫が されました。 ところが近年は、銀行、集荷や、災害時には物資供給の拠点となるなど小 売店から大きくかけ離れた機能を持つようになりました。 今後はどうなるでしょうか?
  7. 古いアニメでは若者全員がスマートフォンを持っていず、小学生全員がDS を持っていません。しかし、現代社会では、スマホやDSはマストアイテム となっています。 このように、必ずしもアニメやSFなどで予言された未来が来るとは限りません。 例えば10年後にはどのような生活が待っているのでしょうか?
  8. インターネットの発明に貢献した一人である リックライダーは音響心理学者でした。 また、Apple Computer を創ったジョブズは、印刷技術、宗教、哲学 などを学んでいたそうです。 そもそも、コンピュータやインターネットができてから、大学に情報工 学科が生まれました。 今後、未来を創る技術を生むには、どんな知識、教養が必要なのでしょうか?

坂本直志 <[email protected]>
東京電機大学工学部情報通信工学科